スタッフ日誌

2013年03月18日

心理学理論「臨床動作法」と音楽療法の見事な一致

3月17日に、日本音楽療法学会関東支部大会に参加して来ました。

特別講演をされた成瀬悟策先生(九州大学名誉教授)は、御年90歳というご高齢の心理療法研究者で、「動作法」の大家とのことでした。(というより、「臨床動作法」の提唱者その人そのものでした!)

耳が遠くていらっしゃり、ご講義の内容は、残念ながらお声がくぐもってよく聴き取れないところもあったのですが、その分、先生は、抄録に詳しくその内容を書いておいてくださいました。

「臨床動作法」とは、1960年代後半に成瀬先生ご自身が提唱された心理療法・心理学理論の一つで、人の「動作」は、「主体」の活動であると同時に、「被動感」(動かされている感じ)として感じる動作も、「主動感」(自ら動かしている感じ)もその動作は主体による活動であるとし、脳性マヒの青年への臨床で効果を上げて以来、今では、自閉症・多動症児、統合失調症、認知症高齢者、さらにスポーツ選手のトレーニングにまで取り入れられるようになっているといいます。

基本概念は、

・「動作」とは「意図-努力-身体運動」というものから成り立っている。

というもので、体がうまく動かないのは、努力の仕方が間違っているから、努力がうまくいかないのは、意図の仕方が間違っているから、という風に考えるようです。

さらに、成瀬先生は、「ぼくは音楽療法のことはまったく判りませんが」とおっしゃって私たちを笑わせた上で、なんと、この「動作法」の観点から、対象者が音楽療法によって変わっていくとしたら、と言う治療過程を類推・仮想してくださったのです。

驚きました。

それはまさに、実際の音楽療法の臨床過程における、対象者自身の音楽による変化の過程を、そっくりそのまま再現しているかのようなストーリーだったのです。

そして何より勇気づけられたのは、…

ちょっと難しい書き方になってしまいますが、ごめんなさい。

実は、過去過ぎて忘れ果てるほどのいの一番の、最初の人の音楽への反応は

「警戒」

に始まるのでは、とのことでした。

そしてこの、人の音楽体験が、成瀬先生によれば、
16もの過程を経て、

「変性意識状態による厳しい現実の拘束からの解放」

に至って、ついに、

「生活化=現実場面へ具体的に対応する気」
「本気でやる気が醸成されてくる」

段階を迎える、という結論に達していたのです。

これは、ここへ来て、丸17年間の臨床経験を経た私が掴んだ音楽療法の「極意」のようなものと、きっちり一致していました。

スタッフ日誌にはこれ以上書きませんが、明日からまた、余分な力こぶをこしらえちゃいそうです。

「臨床動作法」は心理療法ですから、
音楽療法が心理療法であることを、ここでももまた、確かめて来ることができました(*^^)v。

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