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音楽療法は「おかあさんの技」から生まれたと言っても過言ではありません。 まだ話すことができない赤ちゃんが泣く時、おかあさんは、一緒に暮らしているうちに、TPOと泣き方で、甘えたいのか、お腹が空いたのか、お尻が気持ち悪いのか、気分的不快なのか、体調が悪いのか、解るようになっていきます。

でも、まだ話すことが上手にできない乳幼児が、甘えたい、お腹すいた、おむつが気持ち悪い、以外で怒って、抱っこして優しくあやしても泣きやまないと、時に疲れているおかあさんは、困り果てて自分を見失いそうになったりもします。どうしたの? わからない… 教えてよ、とおかあさんだって泣きたくなるものです。そんな時、お母さんの気分は抑うつ感に支配されそうになっています。

似たようなことは、更年期の自分自身の気分の不安定さに直面しても起こります。また、認知症や脳血管障害等の重い後遺症が残ってしまった夫や親御さんを介護する時にも起こり得ます。

女性は、生まれた時から母に学び、やがて母となり、子どもを持たなくても誰かしらを育てる機会を持ち、そして、今度は自分の母親のお世話をし、やがてお世話をされる母になるという、人と人との一対一での密な関わりの中で、言葉では伝え切れないたくさんの思いを、笑顔や、優しい言葉での語りかけに託して、自分の辛さや悲しさをぐっと堪える日々を送ることがあります。

そんな「おかあさん」たちが、まず最初に直面する子育てにおける疲労や苦悩に少しでも寄り添いたい!…この団体を立ち上げた思いです。

私自身もこれまで、たくさんの壁にぶつかりました。
愛が強ければ強いほど、相手を思いやれば思いやるほど、心が追い詰められました。諦めて、手放せば楽になるのに、それでは自分自身を裏切ることになるからそれはできない。
そうやって、苦悩が限界に達した時、考えすぎて精神のバランスを崩してしまう人もたくさんいます。
また、思いやりから熱心に伝えた言葉が、相手の自由意志にとっては煩い反論になってしまい、突如信頼を失って関係が壊れてしまうこともあるでしょう。
言葉って、厄介なものです。

「相手のあること」
という言葉があります。
育てることとは、相手が我が子であっても、自分とは違う人間である「相手のあること」で、その相手の成長(好転)変化を促しながら、待つことなのですが、これを、相手を変えてあげること、と勘違いしてしまうところから迷いは始まります。

でも、そんな時、歌が、何気ない音が、限界を支えてくれて引き返せることが、私にはよくありました。

音楽療法は、究極のプレイセラピーと言っても過言ではありません。
プレイ=「遊び」には、いくつかの要素があります。*1競争の要素、非日常性、模倣性、そして、振り回され、掻き回されるようなスリル感です。
誰かと、音楽の中で遊ぶと、これらの全てを安全に取り入れながら、いつの間にか癖になってしまっている非柔軟な気構え、心の壁などを、じっくり解体して新しく作り替えていく手助けになるのです。これが、「音楽療法」です。

これまでのさまざまな研究で、発達がゆっくりのお子さんの発語獲得支援、自閉症スペクトラムのお子さんの発達支援や情緒の安定化、慢性期の精神疾患の方の社会復帰のための支援、パーキンソン症候群などの神経疾患のリハビリテーション支援、寛解状態の双極性障がいの方々の社会生活支援、重い認知症の患者さんのご家族とのコミュニケーション支援など、さまざまな分野・領域において、音楽療法の効果が発表されています。

音楽は、一人では作れません。作った人がいるから聴く人がいる、演奏する人がいるから作る、歌う人がいるから伴奏する、聴いてくれる人がいるから演奏する、というように、録音された音楽で見えない相手であっても、一つの作品には「別の誰か」がいるのです。

また、音楽には重層的な演奏の方法がたくさんあるので、刺激に慣れて意外性がなくなるにつれて、一人より二人、あるいは三人、そしてもっとたくさんの仲間と演奏する方がより楽しさが倍増します。
けれども、私たちが人生で最初に音楽を聞き分けるのは、大抵お母さんの子守唄やあやし歌によるのです。

こうして、何ものかにあやして(励まして)もらったり、何ものかに寝かしつけて(慰めて)もらったりして、私たちはあらたな自己表現方法を探し当て、リセットして前に進んでいくことができるのですね。

私達はこのような励ましたり慰めたりが得意な「音楽療法」で、多くの女性たちとその大切な家族(お子さんやお母さま)・お友達の応援をしたいと思っています。
妊娠中の女性・子育て中の女性・認知症予防のために頑張っている女性・我が子の顔も分からなくなってしまった女性。
音楽療法を通して、すべての女性の生きる力・育てる勇気となりたい・・・
不安を感じている方は、ぜひ一度私達に会いにきてください。
改善したい状況が好転できるようお手伝いをさせていただきます。
また、療育や介護の現場にいらっしゃる方々にも、音楽療法における音楽や楽器、声、音の使い方を覚えていただけたら、と願っています。

*1 「遊びと人間」ロジェ・カイヨワ著 多田道太郎・塚崎幹夫訳,1958.より

Profile

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NPO法人 心のおしゃべり音楽工房
代表理事 中井 深雪 なかい みゆき
1986年 国立音楽大学 卒 幼児音楽教育専攻
コーラスグループ「いずみたくファミリー」元メンバー
幼稚園教諭普通免許状(一種)取得
ホームヘルパー2級課程修了

日本音楽療法学会 1998年度 認定音楽療法士(第217号)
2003年度 2008年度 2013年度 2018年度 更新

大学卒業後、「表現によるコミュニケーション」というテーマを持って、幼児教材、イベント、ミュージカル、TV、ラジオ、広告などの仕事に携わる。
自身の出産・子育て中に音楽療法と出会い、音楽療法士として活動を開始。
以後、児童と精神科を主な領域とした音楽療法で、延べ2,000人の治療を行う。
MTN世田谷対話音楽工房、MTN心のおしゃべり音楽工房を主宰し、2015年12月にNPO法人化。心の中にある悩み・問題をシンプルに切り取り治療につなげる手法は、心の負担が少ないと評価され、子供達やお母さんからの信頼は絶大。明るいキャラクターと心からの笑顔で周りを元気にするムードメーカー、幅広い年齢層の方に支持されている。

発表論文
治療構造としての音楽療法プラットフォーム.(共著),音楽療法研究、3:107-115,1998 他

著書
「母と子の対話音楽集~Play for you~心のおしゃべり音楽室」全二巻,全音楽譜出版社 刊,2003

共著書
「音楽療法のすすめ」 第5章「自閉症児のための音楽療法」:74-105,ミネルヴァ書房,2006

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