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中井深雪

2018年07月28日

Lちゃんのたなばた☆星に願いを♪

今年の七夕の日、東京では観測史上初の6月中の梅雨明けから一週間、七夕といえば思い出す限り必ず夜降る雨が降らなかった珍しい日でした。

そしてこの日は、Lちゃんが、音楽療法開始9年9ヶ月目にしてついに、歌ってリクエストをしてくれた、感動の日となりました。もちろん、兆候はあったのです。まずはそれを辿ってみましょう。

Lちゃんは今年16歳。特殊な染色体の異常を持って生まれたLちゃんは、小学生の頃から稀に流暢な発語があっても対話にできず、これまでは、年に2,3度直前に演奏した歌の歌詞の一部をエコーのように「言って」くれる以外は、表情と行動だけが彼女の意思を知る手がかりでした。でも、Lちゃんが落ち着かない行動をする時には何か明確な意思や希望があるとセラピストたちは感じていました。

1年前の3月に、おうちで突然「じゃがりこ買いに行きたい」と言い出し、お母さんがびっくりしてコンビニに連れて行ってみたら、本当にじゃがりこを手に取った、という嬉しい話があったのですが、それからまたそうしたお話がありませんでした。

でも今年の5月に、妹さんに、自分が持っているお菓子を「あげない」と言う事があって、お母さんが面白がってもう一度、「えーそんな事言わないで一つあげたら?」と切り返したら、再度「あげない」と言ったので、「会話になった」と喜んでいらしたのです。

この2年くらい、ちょうど背も伸び、体が女の子から女性になっていく過渡期の情緒かなと思うこととして、喜んでくれる選曲にNHK「おかあさんといっしょ」の最近の歌が全く含まれなくなりました。

そして7月7日、Lちゃんは入室するなり右手で自分から私の左手首を握って、何か訴えるように見ながら、曲を特定できない歌を歌ってくれていたのです。でもその時はまだ、それが歌って欲しい、あるいは歌いたい歌の事を知らせようとしてくれているのか、それとも何か別の意思に基づく感情的な表出なのかを見極められませんでした。なのでいつも通りセッションを開始したのです。するとそのセッションの中盤、今流行中の♪シンデレラガールからの♪きらきらぼし というキラキラした展開の最中に、「空に〜星が〜」と、Lちゃんが自身の低めの音域で歌ったのをそばで聞き取ったコ・セラピストの先生が、「♪星に願いをでは?」と気づいてくれたのです。おそらく、私よりもLちゃんと地声の音質が近かったから気づけたのではないかと思います。「えぇ〜ホント?」と、歌詞が違うので半信半疑で演奏してみたら、それまでの不安そうな表情が一転、即座に一緒に歌い出したのでした。「Lちゃんすごい!」「ありがとう!教えてくれて!」セラピストたちはこの日の感動を忘れることはないでしょう。

その後、計画通りの選曲2曲でセッションが終わり、お母さんとの感動の懇談中には、Lちゃんは♪ドレミの歌を歌ってくれました。これは今度こそ、歌詞ではなく、メロディラインによって、私にもすぐに判りました。

それまで、正確な歌詞でのおうむ返しは何度もあったので、私はてっきり歌詞を違う歌詞で歌うとは考えておらず、すぐに気づいてあげられなかったのだと思いました。

帰りには、靴を履くために玄関椅子に座って、♪サモア島の歌 も歌ってくれました。やはり歌詞は違ったのですが、フレーズと相対的な音程がほぼ合っていたので、今度も私にもすぐに分かり、歌い返してあげると、満足そうに笑顔で応えてくれました。

翌日メールでお母さんも、「私もLが歌って伝えられたこと、とてもうれしかったです!」とおっしゃってくださいました。そして同意をいただき、今回Lちゃんのエピソードを初めて日誌にご紹介できました。
お母さんも私たちも、Lちゃんが自分の意思を自分の力で伝える努力を信じ、決して諦めませんでした。だから喜びもひとしお。
落ち着かない行動がある方ほど、本当に伝えたいことが違うんだ、何か別にあるんだ、ということを、またクライエントさんに教えられたセラピストたちでした。

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